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漢方薬

今、漢方薬が流行っています。

 町の薬局・薬店の前に「八味地黄丸(はちみぢおうがん)」とか「五苓散(ごれいさん)」という旗がはためいているのを目にした事はありませんか?また「〜に〜湯」などというポスターもよく店頭に貼られていますね。そう、今は空前の“漢方ブーム”なのです。
漢方は、江戸時代までは日本医学の中心だったのですが、明治初め「医師免許は西洋医学を修めた者だけに与えられる」事が決って以来、医学界からほとんど姿を消してしまいました。所が、昭和51年約40種類の漢方製剤が健康保健薬として取り扱われるようになり、漢方を専門としない一般の医師にも漢方エキス製剤が手軽に扱われる様になってから、再び注目を集め出したのです。その後十年余りのうちに、全国の医療機関で使われる漢方薬の量は十数倍にふくれあがり、医師の半数近くが漢方薬を処方の中にとり入れるようになりました。
何故こんなに漢方薬が好まれるのかを考えてみますと、やはり「効き目が穏やかで副作用が少ない」という理由からでしょうか??西洋薬が特定の組織や生体機能だけに鋭い効き目をだそうという狙いで作られたのに対し、漢方薬は穏やかな生体調節機能のうちに薬効を求めた、という違いがあります。「心身一如(肉体と精神は一体)」と考え、それを診断だけでなく治療に結び付けるという独特の思想が漢方の基本にあるのです。

民間薬と漢方薬―――そのちがいは?
この漢方ブームに誘発されるように自然食品や民間薬も注目をあびるようになって来ましたが、自然食品はさておき漢方薬と民間薬の違いをどれほどの方が理解されているでしょうか。ともに同じ生薬(しょうやく:植物の根・皮・種子や動物の骨など)を用いていますが、漢方薬は漢方医学の診断のもとに処方を選び治療に用いられる薬(方剤:ほうざい)であり、一方、民間薬とは理論大系がない中で、大衆が言伝えや経験で身近な生薬を用いるものです。“越後の毒消し”のように複数の生薬が使われる物もありますが、センブリやゲンノショウコのように単一の生薬を内服または外用する場合が多いようです。漢方薬も、独参湯(どくじんとう)のように朝鮮人参単味のものもあれば、8種類の生薬からなる八味地黄丸のようなものまで様々です。構成生薬の数が少ない処方ほど作用が強いと言われています。

漢方=副作用のない薬?
長い伝統的使用実績のもとで使われているという事、またいくつもの組合せにより方剤がつくられているという事などから、多くは副作用がないと考えられがちですが、そんな事は有りません。現に最近では、肝炎に第一選択剤であるかのように用いられる小柴胡湯(しょうさいことう)で逆に肝機能の悪化がみられた症例が厚生省より報告されています。漢方では、体の表面で観察できる様々な特徴や患者の訴えを総合したものを「証:しょう」とよび投薬や治療の重要指針とします。この証があわずに(これを漢方では“誤治:ごぢ”といいます)肝機能の悪化をくい止められなかったのであり、他剤例えば補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などに変えたら改善が見られたという報告もありますが、これらの事は安易に使われがちな漢方エキス製剤への警告とも受け止められるのではないでしょうか。

漢方薬と漢方エキス製剤とは?
先ほどから、漢方エキス製剤という言葉がでてきていますが、これは漢方薬とはどう違うのでしょうか。
漢方薬というと、例えば葛根湯のように“湯”とつくものは、いわゆる“煎じ薬”で生薬を証に合わせてブレンドし、水の中で数十分間煮つめた“スープ”が本来の形です。このスープを濃縮してインスタントコーヒーのようにスプレードライ方式やフリーズドライ方式をつかって顆粒状や錠剤にしたものを、漢方エキス製剤といいます。“丸”・“散”とつく漢方薬も同じように造られています。煎液の場合、料理と同じで材料や作り方の微妙な差で品質に違いが出てきてしまいます。また生薬そのままですと持ち歩く薬の量も多く、旅行などの時は大変です。そこで40年位前に考えられたのが、漢方エキス製剤なのです。これなら煮だす手間もありませんし、携帯にも便利です。品質は製薬会社が管理しているのですから、一定の製品を供給できる訳です。

漢方薬は、いつ服用するのが良いのでしょうか?
漢方薬は、食前あるいは食間の空腹時投薬を基本としていますが、その根拠となる文献を見つける事が出来ませんでした。どれも、空腹時の方が吸収率がよいからと記しているのみです。一般に、薬は吸収される時、脂質よりなる細胞膜を通過しなければなりません。これは、胃内pHにより左右されるのですが、漢方薬の成分が酸性物質か塩基性物質かにより、胃内pHと吸収の相関関係を知る事は出来ます。実際小柴胡湯エキス製剤に着目し、食前・食後服用を検討した所、甘草の一成分グリチルレチン酸は食前投与で胃内pHの低い時の方が吸収は良いのですが、これらの研究は緒についたばかりです。しかも、漢方薬は幾種類もの生薬の組合せであり、生体での吸収も大変複雑と思われます。又、最近の報告によるとほとんどの漢方薬が消化管運動を亢進させるといいます。あの漢方薬独特の味・香りが胃液の分泌を促進させる様です。とするとやはり食前がいいのでしょうか....結論は簡単に出そうにありません。今の所「一般に、食前や空腹時に飲んだ方が良いと言われておりますが、胃腸障害や味の苦手な方は、食後に服用してもかまいませんよ。」としかいえない様です。服用されずに効くわけないのですから

さらに、有効性を上げる工夫を2つほど
エキス剤は、出来るだけお湯に溶かして温服した方が良いようです。ただ、のぼせ等に使用する黄連解毒湯(おうれんげどくとう)や三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)、嘔気に使う小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)は冷服した方が飲みやすいようです。又、食用のひねしょうが(漢方では、これを生姜:しょうきょうといいます)の絞り汁をエキスを溶かした液に添加するとよい事もあります。生姜の発汗・解熱作用を利用するのです。これは、葛根湯や小半夏加茯苓湯などに利用できます。
今日の医薬品は、生薬をそのまま使う事から生薬の1つの作用に注目し、成分を分離・合成することから発達してきました。下剤として用いられているセノコット・プルゼニドなどがそうです。これは、便秘などの証に用いられる生薬の1つ大黄から抽出されたものです。単一成分を薬物として使用すれば服用量の増加とともに効きめも強くなりますが、逆に副作用も当然出現してくる訳です。ところが漢方薬はいくつもの生薬を含む混合物ですから、その中にはアゴニスト(薬効を促進する成分)もあればアンタゴニスト(薬効を阻害する成分)もあり、量が多ければ作用も強いというほど単純ではないようです。例えば、五苓散など利水剤(りすいざい)と呼ばれる漢方薬は、単に尿を増やす利尿作用だけでなく、患者が脱水状態にあれば尿を減少させ体の水分を保持するように働きます。
ところでごく最近、一部の受験生の間で、かぜの予防のために市販されている葛根湯を服用することが流行となっているそうです。漢方のかぜ薬には、眠気を招く抗ヒスタミン剤が含まれておらず、それどころか葛根湯に配合されている麻黄(まおう)には、エフェドリンが大量に含まれています。エフェドリンはカフェインのように神経を刺激して眠気さましになります。このため、受験生の間に葛根湯の人気が高まっているのではないかというのですが、いくら緩和な漢方薬とはいっても、これではあまりにも“薬づけ”という印象がなきにしもあらず。
漢方薬は証さえ合えば、自律神経失調症やアレルギーなど慢性疾患に大変有効ですが、余りに未知な分野の多い薬物でもあります。しかし、全国の研究者にとって、今、漢方薬はトレンディ?な薬物なのであり、さまざまな作用が解明されつつあります。医療費見直しの厳しい昨今、又、生薬の入手の厳しくなる将来の為に、漢方薬を大切にして行きたいと思いませんか?

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