HOME生き活き情報>鉄剤のお話


鉄剤のお話

妊婦にレバ−?(鉄剤のお話)

 薬局の窓口で妊婦さんから、お薬の相談を受ける事が多々あります。皆さん妊娠中は、なるべくお薬を避けたいとの思いの様です。
現在、妊婦さんによく使われるお薬に貧血治療の鉄剤がありますが、これとても同じこと出来れば飲まずに済ます事はできないか、食事療法で治せないかという事の様です。貧血妊婦の食事指導で一番取り上げられるレバーに関して、ちょっとしたレポートを目にしましたので紹介します。
一般に成人の鉄所要量は、男性1日10mg、女性は月経時損失分を付加して12mgと定められています。1回の妊娠で、母体の赤血球増加分、胎児胎盤分として合計約1000mgの鉄が必要になります。そのうち約450mg位が再利用されるので、残り500〜600mgを補給していく必要があり、妊娠時には鉄の付加量は前半期で1日3mg、後半期及び授乳期には8mgにもなります。現在の豊かな食生活では、簡単に取れそうにも思いますが、鉄の吸収率は10%と大変低い為、潜在的に貧血傾向のある妊婦は需要の増加に耐えられなくなります。母体の貧血は、出生時の陣痛微弱・出血過多・産後の回復のおくれ・赤ちゃんの発育不良のみならず、出生後の赤ちゃんにも影響します。母乳には鉄分が少ない為、赤ちゃんはお腹にいる間に離乳期までの鉄分を貯える必要がありますが、母体が貧血の場合、赤ちゃんも生後2〜3カ月の体重増加する頃に貧血になりがちです。一般に、血色素11g/dl以下になりますと、鉄剤投与の対象となります。妊娠時の常用量は1日100mg位が適当と言われております。

貧血妊婦の食事指導
よくマタニティ雑誌で見かける企画であり、鉄を沢山含む食品としてまずレバーを勧めており、その独特の臭みを消す調理上の工夫をのせているものもあります。
食品に含まれる鉄には肉などの動物性食物に含まれるヘム鉄と植物性食物に含まれる非ヘム鉄があり、非ヘム鉄の吸収率5%に比べ、ヘム鉄は28%とずっと吸収率が高くなります。これを見ても、貧血にレバーは大変効率のよい鉄摂取法である事は確かです。しかし、レバーには鉄のほか他の食品とけた違いな量のビタミンAも含まれているのです。一般に栄養素の所要量は、妊娠すると赤ちゃんに必要な量を特別に加算するのが普通ですが、ビタミンAだけは妊娠初期の付加量を“0”と定めてあります。これはビタミンAが代表的な催奇形成物質であるからです。妊娠3〜5週に毎日2万5千〜4万単位のビタミンAを摂っていた妊婦より、泌尿生殖器系の奇形が生じたという報告もありますが、食物と催奇形成の因果関係は確定出来ない事の方が多い様です。毎日1万単位のビタミンAを摂取するとビタミンA過剰症が生ずると言われております。1万単位のビタミンAはレバーにすると20g強わずか1切れです。レポ−トでは、貧血の妊婦に一生懸命レバ−を勧めビタミンA過剰症をおこさせている可能性すらあると警告しています。鉄の吸収率向上の為にはビタミンCも必要であり、又、非ヘム鉄食品もヘム鉄を多く含む食品と一緒に摂取する事により吸収率はグンと上昇します。

ここが一番大切です
妊娠初期具体的には、胎児の身体の中の様々な臓器が出来上がる妊娠16週までの器官形成期の間は、レバ−一辺倒の食事を避け鉄剤を多く含む食品を中心に、全体に栄養素のバランスのよい食事をする必要があります。そして妊婦の貧血の治療には、鉄しか含まない鉄剤をきちんと服薬する事が一番重要な事と思われます。又最近、様々な成分を加えた食料が出回っておりますが、これらはあくまで嗜好飲料であり、頼りきる事は今の所禁物と思います。

お茶と鉄剤
鉄剤を服用する時、以前は緑茶やコ−ヒ−と一緒に飲まない様にと言われておりました。緑茶やコ−ヒ−の中のタンニン酸と鉄が不溶性の塩を作って鉄の吸収が阻害される為でした。しかし、最近この影響は実際の治療上ほとんど無視しえるという報告がみられています。鉄の吸収率が低いために、投薬量が必要量の10倍にもなりその影響が無視されてしまう為と思われます。また一方、鉄とタンニンの結合はpHの高い条件下で起こり易く、食直後に鉄剤とお茶を同時に服用した場合、強い抑制が見られたという報告があるのも事実ですが、現実的には、『濃いお茶での服用は避けて下さい。』程度の注意でよいのではないかと考えられます。

このページのトップへ戻る