HOME生き活き情報>眼科のお話


眼科のお話

眼科のお話

眼の構造
眼の構造はよくカメラにたとえられます。ほぼ10円玉と同じ大きさの精巧な立体的なカメラです。全体は、眼窩と呼ばれる頭蓋骨のくぼみに脂肪に包まれて おさまり、眼瞼(まぶた)で保護されています。それぞれの眼球には6本の筋がついており、3種類の神経で操られながら、共同して視線動かしています。
カメラではレンズが一番前にあって外の光、物の形をとらえ、奥の方の フィルムに感光させます。ピントを合わせるのにレンズを前後に動かします。眼ではこのレンズに相当するのが水晶体です。眼では水晶体を 前後に動かすのではなくて、その厚みを 加減してピントを 合わせます。
フィルムにあたるところを網膜といいます。カメラには絞りがあり光の量を 調整します。眼では虹彩の真ん中のヒトミ(瞳孔)の部分が大きくなったり小さくなったりして、その役をしています。カメラではフィルムに化学変化を起こさせ、それを後で現像します。眼では、フィルムにあたる網膜に光が達するとその化学変化を直ちに脳へ電気的に変化させて送り、脳で形を認識します。一定の経路を通って脳に達するのでこの経路のどこかに障害があると眼は開いていてもものは見えません。眼球に異常があればもちろん見えないし、眼球に異常がなくても脳に 異常がおきるとやはりみえなくなります。カメラではレンズにあたる水晶体は普通は透明ですが、濁ってくれば、その程度に応じて視力が悪くなってきます。水晶体が薄いときは遠くが見え、水晶体が厚くなると近くが見えます。年をとると十分に水晶体の厚みを変えることができなくなります。これが老眼で、近くが見えにくくなってきます。水晶体が濁ってきたものを白内障(しろそこひ)といいます。(図1、図2)

(図1)

(図2)

白内障の お話
《原因》
白内障にはいろいろな原因がありますが最も多いのは老人性白内障です。老化現象の一つですが原因はよくわかっていません。40歳を過ぎるとたいていの人は水晶体のはしが濁ってきます。ただし濁りのため目が見えにくくなる年齢は人によって違います。早い人で50歳ぐらいから、70歳を過ぎると千人のうち8人くらいが白内障のため見えにくくなります。糖尿病があったり、栄養の悪い人、紫外線の強いところで生活している人は進むスピードが早いといわれています。(図3)

(図3)

《症状》
白内障になってもはじめのうちは症状がないのでほとんど気がつきません。濁りがやや進んでくると、何となく目がかすむ、目の前がチラチラするなどといった症状が起こってきます。濁りが 水晶体の真ん中まで進むと、物がはっきり見えなくなったり、ものが 二重三重に見えたり、光が眩しいといったようなことを自覚するようになります。さらに進めば視力がだんだん下がり、人の顔もぼんやりとしか見えなくなります。

《予防と治療》
では 、予防するには?というと白内障は言わば目の老化ですから完全に予防することはできません。
白内障の治療には薬物療法と手術があります。薬物療法ではいくつかの点眼薬、内服薬、漢方薬などが使われていますが、これは、一度濁った水晶体を透明にするのではなく、白内障の進行の速度をある程度遅くするためのものです。確実に進行を止める薬はまだないので、ある程度進行してしまった白内障は手術で取り出すことになります。
ふつうはどれくらい見えなくなったら手術を受けるかというと、それは人によって違います。その人が見えなくて困るようなら手術を受けた方がいいと思います。自動車を運転する人は視力が0.7以下になれば手術が必要です。本を読むのが好きなら、視力が0.4以下になったら手術を受けた方が楽でしょう。視力が0.1以下でも生活に不自由でなければ、手術をのばせます。ただ余病が出ないよう、時々検査を受けなければなりません。

《手術 》
白内障の手術は濁った水晶体を取り除く手術です。それには嚢外摘出、嚢内摘出、吸引法、それに今最も一般的な超音波水晶体乳化吸引法などの方法があります。水晶体を除去した後は水晶体のかわりをするレンズが必要になります。昔は手術後は厚い凸レンズの眼鏡をかけました。今はコンタクトレンズや眼内レンズがあります。今最も多く使用されている眼内レンズは水晶体を取り出すと同時に眼の中にいれてしまうので面倒がありません。その人の条件によってどれを選択するかは違いますから、医師と相談してください。(図4)

(図4)

緑内障のお話
次は同じ『ソコヒ』のなかでも怖い緑内障について説明します。緑内障は(青ぞこひ)ともいわれ白内障とならんで眼の病気の中でも多いものの一つです。緑内障は進行すれば最終的には視力が損なわれ、しかもそれが回復不能の状態になってしまう困った病気です。というのは、緑内障は網膜で感じた外界のイメージを脳へ伝える神経、すなわち視神経がおかされる病気だからです。どんな原因にせよ、視神経が一度障害を受け視力を失うと、多くの場合もうもとに戻りません。緑内障では眼の内圧、すなわち眼圧が異常に高くなったために、視神経の働きや循環が障害され、視神経線維の消耗、脱落がおこります。眼圧の上昇が急激におこればいっぺんに視力が悪くなることもありますし、徐々に始まった場合は、最初の内は視力は変わらず物の見える範囲の変化(視野の変化)として現われてきます。これらのことから緑内障を一言で言えば、『何らかの原因で眼圧が上昇し、視神経が障害される病気』ということになります。
《緑内障の機序》
緑内障と診断するには眼圧の高いことが重要な決め手の一つとなりますが、なぜ眼圧が高くなるのでしょうか。それを理解するためには、眼圧の高さがどのようにして決まるかを知る必要があります。眼に触ると一定の弾力性があるのがわかります。これは、眼の中で、絶えず房水と言われる透明な液体が循環していて、眼がペしゃんこになったり(低眼圧)、固すぎること(高眼圧)のないように、正常眼では10から20ミリ水銀柱に調整されているからなのです。房水は茶目の後の方(毛様体)で作られ、黒目(瞳孔)を通って前の方し(前房)に移動し、白目(強膜)と茶目(虹彩)の境(隅角)にある排水路から眼の外へ流れ出ます。(図5)この境目はわずかな隙間しかないため、いろいろな原因でこの排水路が閉鎖されることがあります(閉塞隅角)。また、排水路自体の機能が悪いと、閉鎖はされていなくても(開放隅角)、房水が流出しにくくなります。こうして房水の流れに滞りがおこり、眼圧が高くなるのです。

(図5)

 緑内障は大きく分けて慢性的な経過をたどるものと急激に起きるものとがありますが、中でも気付かないでいると手遅れになるので特に注意が必要な急性のものについて説明します。
一般に急性緑内障発作と言われますがこれは房水の排出路が、茶目(虹彩)の根元で塞がれる為に起きる緑内障です。この排出路はわずかな隙間にありますが、この隙間が体質的に狭い人があり、年齢が進むにつれそれがはっきりしてきます。このような眼では、何らかの拍子に虹彩の根元が、突然排出口を塞ぐことがあります。このため房水の流れは急激に滞り、眼圧はみるみる上昇します。長い間暗い所にいたり、うつむいて仕事をしたり、精神的に興奮したりするような状況下でおきやすいといわれています。急に眼が痛みだし、充血し、霧がかかったような霞み眼が出現し、激しい頭痛や吐き気、嘔吐がおこります。
これを急性閉塞隅角緑内障発作と呼び、40代〜50代の女性に多く起こります。発作が起きてもすぐに治療をすれば眼圧も下がり予後もよいのですが、時間が経つほど治りにくくなります。頭痛などがひどいため内科の病気と間違われて、手遅れになることがあるので注意が必要です。

《予防》
一般的に緑内障は中高年からおきてくる病気であり、成人病の一種とも考えられます。ですから、例えば定期的に成人病の健康診断を受け、体の検査以外に眼圧や眼底の検査も合わせて行っていれば、かなり早期発見に役立つはずです。その他に、身内(血縁者)に緑内障の人がいる方、糖尿病、強度近視がある方は普通の人より緑内障になりやすいといわれています。また、いろいろな病気でステロイドホルモンを使用している人も、緑内障をおこしやすいので、いずれも眼科医の定期診察を受けるようにして下さい。
飛蚊症のお話
目の前に「黒いものが飛ぶ」ことを眼科では飛蚊症といいます。蚊が飛んでいるように見えるという意味ですが、実際にはこの他に水玉、ハエ、黒いスス、糸くず、おたまじゃくし、輪などが見えることもあります。また黒いものから透明なものまで色もさまざまで、数も一個から数個、時に多数のこともあります。これらのものは目を動かすとふわっといった感じで目といっしょに動いてみえます。飛蚊症は眼球の硝子体に濁りができたためにおこる症状です。

《硝子体》
そこでまず硝子体のことをお話ししましょう。硝子体は水晶体(眼のレンズ)の後方から網膜に達するまでの眼球の大部分を占めています。その中に卵の白身の様な透明でドロッとした物質がつまっています。目の一番前にある透明な角膜、その後方の前房、、水晶体を通ってきた光は硝子体を通過しても網膜に達して物が見えるわけです。 本来透明なはずの硝子体に何らかの原因で濁りができますと、そのかげが網膜にうつり、目の前に見える様になります。これが飛蚊症です。しかし濁りは実際には目の中にあるのですから目を動かすといっしょに動きます。また網膜に近い部位にあるになると濁りほど、よりはっきり見えますし、濁りの大きさや量によって見えるものの形や大きさが異なるわけです。
飛蚊症をおこす硝子体の濁りは生まれつきのものと生後できたものにわけられます。生後できるものには年をとることによって生じた硝子体の変化によるものと、硝子体の周囲の出血や炎症性物質が硝子体内に入ってきたもの、遺伝性の硝子体の病気、全身の病気によっておこるものがあります。

《後部硝子体剥離》
この中でも年をとることによっておこる硝子体の変化で多いものについて説明します。40代になると透明なドロッとした卵の白身のような硝子体は組成が変化し、硝子体の内に液体がたまった小部屋の様なものができてきます。さらに年をとりますと液体のたまった小部屋はどんどん大きくなり、一方硝子体そのものは収縮してしまいます。液体のたまった小部屋はやがてその後側の壁が破れて液体は流れ出してしまいます。その結果前方に収縮した硝子体、その後方に液体に変わった硝子体がたまります。生卵の白身のような状態の硝子体は網膜と軽く癒着していますが、硝子体の収縮と前方への移動の為にこの癒着もはがれます。これを後部硝子体剥離といいます。(図6)

(図6)

 この後部硝子体剥離が飛蚊症の原因として最も多いものです。後部硝子体剥離は60代前半に好発します。ただし中等度以上の近視の場合には後部硝子体剥離は十年位早くおこります。

《網膜裂孔》
後部硝子体剥離は硝子体の年齢による変化としておこるわけですが、しかしこれが引き金となって重大な病気がおこることがあります。その中で最も注意を要するのは網膜裂孔という病気で、後部硝子体剥離の6〜19%におこります。先に後部硝子体剥離がおこると硝子体と網膜の癒着がはがれるといいましたが、硝子体の全部が網膜からはがれるわけではなく、殊に周辺部ではくっついている部分とくっついていない部分ができてしまいます。このため癒着部の網膜が引っぱられて、その結果網膜に孔があいてしまうことがあります。これを網膜裂孔といいます。網膜裂孔は放置しますと裂孔から液体状になった硝子体が網膜の後ろに入り込んで、網膜剥離というこわい病気になります。網膜剥離に対しては、入院、手術しか治療方法がありません。しかし網膜裂孔だけの時期に発見できますと、光凝固療法といって外来でおこなえるレーザー光線を用いた治療方法によって網膜剥離を防ぐことができます。したがって飛蚊症を自覚したらなるべく早く眼科を受診することが大切です。

《飛蚊症を自覚した場合》
飛蚊症を自覚したら眼科を受診し、精密検査を受け、放置しておいてよいものかどうかを診てもらうことが大切です。特に突然飛蚊症を自覚した場合にはなるべく早く眼科医を訪ね、後部硝子体剥離の有無、後部硝子体剥離によって生じる可能性のある病気、特に網膜裂孔の有無をチェックしてもらうことが大切です。網膜裂孔以外のものでも原因に応じた早期治療が大切ですが、後部硝子体剥離のみである場合など、何も治療を必要とするような病気のなかった場合には、飛蚊症をあまり気にせず、眼科で時々チェックしてもらい 、今まで通りの生活を続ければよいわけです。

糖尿病の お話
最後に糖尿病の合併症の一つである網膜症について説明します。近年、糖尿病網膜症による失明が大きな問題になっています。糖尿病網膜症というのはカメラでいえばフィルムにあたる網膜の、細い血管が障害される病気です。フィルムが傷んでいたらどんなによいレンズを通しても、映像は現像されません。現在欧米では、糖尿病網膜症が失明原因の第1位になっています。日本でも成人の失明の原因の上位になりつつあります。それでは網膜症がみんなそんなに性が悪いかというとそうではありません。良性のものと悪性のものとがあります。まず良性のものからお話ししてみましょう。
《良性糖尿病網膜症》
糖尿病では糖の代謝異常、つまり人体の働きのエネルギー源となっている糖の利用に異常がおきて、血液の中の糖の量−血糖値−が高くなります。その結果、全身の血管に異常が起きてきます。この血管の異常の一つに網膜の血管のような細い血管の異常があります。網膜ではまず毛細血管がおかされ、毛細血管が部分的に球のようにふくらんで毛細血管瘤というものができたり、ところどころの毛細血管がつぶれたりしてきます。また一方では毛細血管の壁がおかされ、血液の成分がもれるようになります。つまり、出血やむくみがでてきます。普通はこういう異常はゆっくりと進行するので、ほとんどの患者さんは視力の異常を自覚しません。まれに視力にとって一番大切な網膜の中心部である黄斑にむくみが出るなどして、視力が低下することがあります。今お話ししたような網膜症は、出血が多少増えたり減ったりを繰り返しますが、何年かの間隔で比較しないと進行したことがわからないほど、徐々に進行していく良性なもので非増殖性網膜症と呼ばれています。

《悪性糖尿病網膜症》
悪性の網膜症は進行も速く、失明の危険性が大きなもので、網膜症のうちの一割位がこの型の網膜症になっていくと考えられています。そして、この悪性網膜症は増殖性網膜症とよばれていますが、増殖性というのは、性の悪い余分な血管−新生血管とよんでいます−が発生し、増殖するということです。網膜の細い血管の異常が進行すると、網膜の毛細血管がふさがって、酸素がいきわたらない部分があちこちに出来てきます。こうなると、血管のない部分の栄養を回復しようとして、この新生血管が出来てきます。また、血管のない部分の網膜から新生血管の発生や増殖を促す物質が作られることも証明されています。そしてこの新生血管は急ごしらえでもあるため、とてももろくて、出血しやすい性質をもっています。また、新生血管の増殖とともに、血管を支える為に結合織というものも増殖するようになります。こういう状態になると、網膜に大きな出血をおこしたり、眼球の中へ出血が入り込んでいく硝子体出血がおこったりします。また、こういった増殖性組織の収縮によって、網膜が引っぱられ剥がれ網膜剥離をおこしたり、出血と増殖物が交ざりあって、網膜の上に増殖膜を作ったりしてきます。こうなると、視力はひどく下がって失明寸前の状態となります。
治療
最終末期の状態になる前の、有効な予防手段はレーザー光凝固術です。これは新生血管が出てくるのを予防したり出てしまった新生血管を焼きつぶして出血するのを予防する治療です。決め手はやはり早期治療で、定期的な精密検査を受けて的確な治療の時期を決めることにあります。網膜症の進行を抑える光凝固も増殖膜や網膜剥離が起きてしまうと無効ですがこのような状態になった目に、最近では、硝子体手術が行われるようになりました。硝子体手術というのは直径1ミリ位の細い器具を眼球の中に入れて、濁った硝子体を取り除いて、再び光が網膜に届くようにして、視力回復を計る手術で、10年位前から行われるようになってきました。(図7)

(図7)

 最近は手術装置や手術技術も進歩して、濁りを取り除くだけではなく、網膜に付着している増殖物を取り除いたり、網膜剥離の原因を取り除いて、網膜をもとの位置にもどすことも出来るようになりました。こういう意味での成功率は最近目覚ましく向上していますが、糖尿病ではすでに傷んでいる網膜や血管を修復させることは難しいので、手術が成功しても、非常によい視力を取り戻すことはなかなか難しいのが現状です。しかし、網膜、ことに中心部の異常が軽ければかなりよい視力を取り戻せることもありますし、悪いながらある程度の視力を保って、それ以上悪くならないようになることもあります。しかし、このような大変な手術が必要にならないように、糖尿病のコントロールにたえず努め、定期的に眼底検査を受けることが何より大切です。
糖尿病はコントロールは出来るが、治ることはない病気です。ですから、定期的に検査を受け、食事療法を含めてコントロールにたえず励まねばなりません。それでも長年の間には網膜症が始まってきます。まして、コントロールを怠った人、全く治療を受けなかった人、発見がおくれた人などが、悪性網膜症になった人達の大部分を占めています。ですから、眼底検査を含めて常に検査を受け、正しいコントロールに励むことが、失明を予防するのに何より大切なことです。

このページのトップへ戻る